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第18回 東京耳鼻咽喉科臨床懇話会を開催

平成24年11月1日に東京・飯田橋のホテル メトロポリタン・エドモントに於いて、第18回となる東京耳鼻咽喉科臨床懇話会を開催しました。

当日は、当院と関係の深いアテンディングドクターの先生方のほか、今回から新たにお誘いした先生方、当院の職員など総勢70余名が出席しました。今回は「中耳手術」を主題に、相原康孝副院長と国際医療福祉大学三田病院耳鼻咽喉科教授の加我君孝先生にお話し頂きました。

神尾記念病院の鼓室形成術

相原 康孝 副院長

相原副院長は「神尾記念病院の鼓室形成術」という演目で「歴史」と「実績」の両方の観点から発表を行いました。

歴史の面からは、当院における鼓室形成術は2代院長の神尾友彦がドイツに留学して同手術を学んだことが始まりであり、帰国後、講演や論文寄稿を行うほか近代的な鼓室形成術の創始者であるウルスタイン教授を当時の神尾病院に招いて手術の実演をお願いし、これを様々な大学医学部耳鼻咽喉科の教授に供覧してもらうなど、同手術の日本への普及に尽力したことを説明しました。

更に昭和50年代から現在までの間に当院で鼓室形成術を執刀された先生方を年代ごとに紹介し、「神尾記念病院の鼓室形成術の歴史は、人の歴史である」と説きました。そして、昭和60年頃に3代院長の神尾友和が考案した、院長室や医局などから手術を監視・指導することができるビジュアルシステムは、手術の上達に欠かせないものであったと当時の思い出を語りました。

実績の面からは、平成元年から現在までに行われた全ての耳の手術記録を集計・分析して、その結果を基に、中耳手術の疾患は慢性中耳炎が約50%、真珠腫性中耳炎が約30%、耳硬化症が約10%といった比率であること、当院で再手術を行った患者さんは、他院で受けた手術結果に不満があって再手術を受けられるケースが多いこと、近年は60歳以上の高齢者が手術を受けるケースが多いが、子供の症例が減っているわけではなく、慢性中耳炎が無くなるという説には懐疑的であること、日本耳科学会の術後聴力成績判定基準をベースにするとⅠ型やⅢcは高い成功率であるのに対し、Ⅳcは病巣を取り除いても聴力回復の可能性は低くなることなどを説明しました。

最後に今後の当院の方向性として、低侵襲な手術への取り組みを行いつつ症例を重ねて更なる向上を図る必要があること、数年のうちに埋込型骨導補聴器や人工内耳の手術を開始できるのでないかと結びました。

耳科学の発展と鼓室形成術の誕生 ~神尾記念病院の貢献~

加我 君孝 先生

加我先生は「耳科学の発展と鼓室形成術の誕生 ~神尾記念病院の貢献~」と題して、以下のようなお話をされました。

1.耳科学発展の歴史
16世紀にイタリアのさまざまな解剖学者によって耳小骨や耳管、蝸牛、聴神経などが発見され、17世紀から18世紀にかけて耳小骨や内耳の解剖図が描かれたこと。それらが日本に伝わったのは、18世紀末に杉田玄白の「解体新書」であったこと。

2.鼓室形成術の歴史
19世紀の後半に初めて耳科手術が行われて以降、20世紀に入ると手術用顕微鏡、吸引器、ドリルなどが開発され、鼓室形成術の発展に大きな影響を与えたこと。その後、ドイツ・ウルツブルグ大学のウルスタイン教授が「伝音連鎖を再建し聴力の改善を行う」という、現在の鼓室形成術の基本となる型を発表したこと。

3.神尾記念病院と鼓室形成術
初代院長の神尾友修が1900年代初めにウルツブルグ大学へ留学し、同大との関係を築いたこと。2代院長の友彦も同大へ留学して鼓室形成術を学んだ後、前述のウルスタイン教授を当時の神尾病院へ招いたほか、オトマイクロサージャリー研究会を主催したり、同教授の著書「聴力改善手術」の日本語訳を行うなど、日本へ鼓室形成術を普及させるのに尽力したこと。3代院長の友和はロサンゼルス耳科学研究所へ留学して人工内耳をはじめとした新しい手術手技を学び、後年、日本で初の人工内耳手術を行ったこと。

4.鈴木淳一先生(当院 元主席顧問)について
3代院長 友和の帝京大学耳鼻咽喉科時代の恩師である鈴木先生は、トライ&エラーを重ねて独自の鼓室形成術のスタイルを作り上げたこと。相原副院長の発表にあった「神尾記念病院の鼓室形成術の特長」からすると、3代院長は同手術において鈴木先生の影響を受けているのではないかという感想。

以上のように、耳科学の黎明期からの現在に至る経過ならびに、ドイツ・ウルツブルグ大学と当院との関係が鼓室形成術の発展へ寄与したと説明されました。
今回、奇しくも2人の先生が共に、2代院長がドイツへ留学し鼓室形成術を学んだことが、当院の歴史に大きな影響をもたらしたと語られました。この歴史・伝統を私たちが受け継ぎつつ新しい技術の習得にも取り組み、更なる発展を目指していく所存です。