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第21回 東京耳鼻咽喉科臨床懇話会を開催

平成29年2月9日に東京・飯田橋のホテル メトロポリタン・エドモントに於いて、「人工内耳手術」をテーマに第21回となる東京耳鼻咽喉科臨床懇話会を開催しました。

当院における人工内耳手術

石井 賢治 医師

石井医師は「当院における人工内耳手術」と題した講演を行いました。
概要は以下の通りです。

神尾記念病院の歴史について写真を用いて概説し、3代院長の神尾友和が1980年12月に日本で最初の人工内耳手術を日本医科大学附属病院で行った事実を、当時の新聞記事を用いて提示した。その後、数例の手術を行ったが、音は入るものの言葉の聞き取りとしては不十分で、数例行った後は当院での手術は行わなくなった。

人工内耳の仕組み、適応、手術の実際について動画を用いて詳細に示し、手術は安全性が高く、術後合併症は通常はなく、手術当日の歩行が可能で、術後5日で退院となることを説明した。また、両耳聴についても言及し、両側聾の方は両側の人工内耳をするべきであることを示した。

当院では、加我君孝先生のご指導・ご尽力の下に3年前から準備を進め、人工内耳手術を36年ぶりに復活させることができ、第1例を平成28年8月に行った。3年程前から急速に進行した両側聾の方に人工内耳手術を施行、術後2週間で音入れを行い、その様子をビデオにて供覧した。その後もリハビリを続け、現在では仕事に復帰され、以前と変わらない活躍をされている。

また、当院では平成27年11月から補聴器外来を設置し、林聴覚診療医長の指導の下、難聴者のニーズに合わせたフィッティングを行っている。補聴器では補いきれない難聴の方には人工内耳手術をお勧めするという、患者の納得のいく体制を構築している。

先月行われた日本耳鼻咽喉科学会主催の国際シンポジウムでは、難聴と認知症、うつとの関連に明確なエビデンスが示された。つまり、難聴克服により認知症患者や、うつ病患者を減少させる可能性がある。これから人工内耳はますます発展し、性能の向上、小型化が予測される。内耳性難聴克服の時代が必ず来る。これからも「耳の神尾」として、難聴者のニーズに応えられる医療を提供していきたい。

聴力廃絶から人工内耳による聴覚の再獲得

加我 君孝 先生

東京医療センター 臨床研究センター長の加我君孝先生は「聴力廃絶から人工内耳による聴覚の再獲得」と題し、以下のようなお話をされました。

①老人性難聴について
平均的な老人性難聴は主に感覚細胞の減少によって起こるのであって、脳の老化によるものではない。純音聴力検査や語音明瞭度検査の結果が良くない状態であっても論理的な会話は可能であり、これを踏まえて高齢者の人工内耳に携わる必要がある。高齢者の平均聴力を見ると、閾値の上昇はあるものの必ずしも補聴器が必要なレベルではない場合が少なくない。人工内耳が必要となる高齢者は、平均的な加齢以外に高度の蝸牛障害が加わっている。

②Scale Outと人工内耳手術について
Scale Outに至る原因は突発性難聴をはじめいくつか挙げられるが、原因不明の進行性感音難聴が非常に多い。難聴によって周囲の方々とのコミュニケーションがとても煩雑になった結果、患者さん自身、内にこもりやすいが、手術によって改善することを繰り返し説明することが必要である。手術に至るまでには画像診断、障害者手帳の発行など、準備が必要となる。単語や文章など『ことばの聞き取りの評価』が最も重要である。手術に際してはリスク回避の点から、術中の顔面神経モニターやEABRで脳の反応、術直後にXPで電極の挿入状態を確認している。退院後の言語聴覚士による音入れとマッピングが大切で、鼓室形成術と違うのは月1~2回の聴覚リハビリテーション(マッピング)を必要とすることである。

③高齢者の人工内耳手術後の効果の動画
術前に裸耳言語聴取がほぼ0%だった方々が、術後にコミュニケーション能力が大きく改善された様子や、聾になられた音楽家の方が、人工内耳を装用後にピアノ演奏を行われた様子などを紹介。

④人工内耳の課題、今後の動向や展望について
稀ではあるが、小児の術後に耳後部の感染を起こした特殊な例があるほか、インプラントの故障、スピーチプロセッサのケーブル断線が起こり得る。諸外国では人工内耳手術は片側の難聴に対しても行われているが、日本では医療費の問題もあって行われておらず、今後の課題となるであろう。