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第27回 職員研修会を開催

平成29年6月15日に東京・神田のステーションコンファレンス万世橋に於いて 、第27回 職員研修会を開催しました。
本年は人工内耳に関する2つの学術講演を中心に行いました。

人工内耳手術について

石井 賢治 医師

石井医師は「人工内耳手術について(新しい技術、残存聴力活用型人工内耳と人工中耳を含めて) 」と題した講演を行いました。概要は以下の通りです。

伝音難聴は外耳や中耳の障害によって生じるもので、鼓室形成術やアブミ骨手術によって改善が可能である。一方、感音難聴は内耳よりも奥の障害によって生じるもので、蝸牛に障害のある内耳性難聴と、聴神経~脳にかけて障害のある後迷路性難聴に分けられる。そのうち、人工内耳手術の対象となるのは内耳性難聴である。

日本では原則として90dB以上の高度難聴(身体障害者2~3級)が対象であり、また、補聴器を装用しても言葉を理解できない方は医師の裁量で手術適応としているが、世界の基準と乖離があり、見直しが検討されている。

人工内耳の仕組みは、体外部のマイクで捉えられた音がスピーチプロセッサ、インプラント、蝸牛に挿入された電極を経て音として認識される。手術は全身麻酔下に行い、2~3時間である。合併症は稀で、安全な手術である。

残存聴力活用型人工内耳(EAS)とは、低音部の聴力は残っているものの高音部の聴力が低下し、語音明瞭度が悪い方が対象となる。低音部は補聴器の機能、高音部は人工内耳の機能によって聴力を補う。

人工中耳とは、50db以上の骨導聴力が残っている、例えば、鼓室形成術の術後も聴力が上がらず、補聴器が使用できない方が対象となる。人工内耳と同様に音はインプラントで電気信号に変換されるが、正円窓に埋め込まれた振動子によって電気信号から機械的振動に変換されて蝸牛へと伝わる仕組みである。

現在、中耳炎は確実に減少している一方で、高齢化社会の到来などによって、内耳性難聴者が増加することが予想される。人工内耳、補聴器はハード・ソフトとも確実に性能が向上しているので、難聴者が人工物を耳に入れることによって聴力が改善される『内耳性難聴克服の時代』が到来すると思われる。今後も病院の総力を挙げて、難聴者への医療を提供したいと考えている。

人工内耳とリハビリテーション

中村 雅子 言語聴覚士

中村言語聴覚士は「人工内耳とリハビリテーション」と題した講演を行いました。概要は以下の通りです。

人工内耳は音の情報をコンピュータで扱うため、音は電気信号に変換して処理される。この処理をコード化という。人工内耳では、音の大きさは電荷量(電気の量)によって、音の高低は、蝸牛に挿入された電極がどの位置を刺激するかと、その刺激の頻度によって区別する。音色を電気信号で識別することは難しいのが現状である。尚、コード化の種類によって、聞こえ方が異なる。その違いを駅のアナウンスや歌でシミュレーションした。

リハビリは、装用者が快適・明瞭に音声を聞き取れるようになることが目的であり、機器の調整=音入れ・マッピングが重要となる。リハビリを行うにあたり、患者さんには「片耳装用で中等度難聴、両耳装用で軽度難聴程度との評価であるので、人工内耳の利点と限界を理解し、入ってきた新しい音に対して、いかに順応するかが大切だ」と説明している。

マッピング(初回時は音入れと呼ぶ)は、術後2週間程度から開始し、電極の動作確認、コード化法や刺激モードの選択、電荷量の測定などを行ってできたマップをプロセッサに入力する、という流れになる。

リハビリ開始当初は、音が不自然に聞こえる、識別ができないといった状況であるが、脳が人工内耳の音に適応することで、患者さんにとって「不自然な音ではあるが、コミュニケーションに有用な道具」となり、常用できるようになる。リハビリを行う際に大事なことは、人と会話する環境を積極的に作る、音が聞こえた際、「何か音がする」ではなく「何の音だろう?」と考えることなどである。

当院での人工内耳手術1症例目の方は、対側にも同手術を行い、両耳装用となった。対側は術後、日が浅いのだが、音入れ当日からスムーズに会話ができ、リハビリ時の言語聴取の結果も良いことから、音声情報の融合化、低周波数の音が聞きやすくなること、音による方向感覚が良くなることなどの、両耳装用の効果が出ることが期待される。

人工聴覚器は多様化してきているので、人工内耳+人工内耳、人工内耳+補聴器、人工内耳+EAS、EAS+補聴器、人工中耳+補聴器・・・など、多くの組み合わせの両耳装用が考えられる。今後、こうした様々な症例を経験できれば、と考えている。