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味覚の検査

「食べ物の味が薄くなった」、「味がなくなった」、「口の中がいつも苦い」、あるいは「甘みだけがわからない」といった味覚障害を訴えて来院する患者さんは少なくありません。見ることや聞くことと異なり、社会生活に直接支障がないことから、以前はあまり重要視されていませんでした。しかし、近年の高齢社会、ストレスの増加などから、味覚異常を訴える方は増加しています。
味を感じる細胞は数十個集合して味蕾(みらい)を形成し、この味蕾が舌・舌の付け根(後方)・軟口蓋に分布しています。有郭乳頭という舌の後方にあるイボイボは、しばしば患者さんがガンと間違われるのですが、これには多数の味蕾がびっしり並んでいます。この味蕾から神経が脳に味を伝達します。味蕾の数は高齢になると1/2から1/3に減少し、歳をとると味付けが濃くなりやすい原因といわれています。
味は、甘味・塩味・酸味・苦味の基本4味から構成されます。甘味以外は舌後方とされていますが、厳密なものではありません。

味覚の検査

味覚の検査は、4味を種々の濃度でしみ込ませたろ紙を舌の上に置き、各々の味に対する味覚障害の程度を調べます。また、電気味覚計により障害の程度が測定できます。微かな電気刺激で金属味が生ずることを利用したもので、舌の上に電極をあて電流の強さを変えて測ります。

味覚障害の原因

味覚障害の原因は、不明な点も多いのですが、次のことが知られています。

  1. 全身疾患の影響による味覚障害
    糖尿病・慢性腎不全・内分泌機能の低下などの全身疾患で味覚障害が生じます。糖尿病では、神経や血管が障害されるため、糖尿病の患者さんの約1/4に味覚障害が生じるという報告があります。

  2. ガンや放射線治療にともなう味覚障害
    ガンの患者さんも味覚が低下し、これが食欲不振の原因と考えられています。また、頭頚部や脳のガンに放射線治療を行うと、口の中やのどの粘膜に放射線がかかり、炎症のため味覚障害が生じます。

  3. 口腔・のどの病気による味覚障害
    舌炎やカゼによる咽頭炎等、口腔・のどの病気でも味覚障害が起きます。また、シェーグレン症候群など唾液分泌が低下し、口内が乾燥すると味覚障害を来します。この場合、唾液の分泌を促進する薬や人工唾液を使用します。喫煙も味覚に悪い影響を与えます。

  4. 味を伝える神経の障害による味覚障害
    鼓索神経は、中耳を通るので、慢性中耳炎がある場合に味覚障害を生じます。また、中耳炎の手術の際、中耳病変除去のため鼓索神経に触れたり引き伸ばしたりすると味覚障害が生じることがあります。
    顔面神経麻痺の際、味覚が障害されることがありますが、これは、鼓索神経・大錐体神経がともに顔面神経の枝だからです。顔面神経のどの部位が障害されているか、また予後の判定に、電気味覚検査が重要です。
    頭部外傷や脳血管障害などにより脳の味覚中枢が障害されても、味覚障害が生じます。味覚と嗅覚がともに障害されていることもあります。

  5. 薬剤による味覚障害
    最近注目されているのは薬剤による味覚障害です。関節リウマチ・高血圧・パーキンソン病・糖尿病等の薬で味覚が障害されることがあります。投与中止により多くは味覚が戻りますが、回復に時間がかかることもあります。これら薬剤が、亜鉛や銅等の代謝に影響を与えていることが推定されています。

味覚障害の治療と予防

最近、亜鉛等の微量金属元素が味覚に重要であることが明らかにされつつあります。亜鉛は、体内で鉄に次いで多い微量金属ですが、この亜鉛が手術やヤケドで不足すると味覚は障害されます。亜鉛を投与すると改善します。
ところが、特に病気もなく、普通の生活をしている人の中で味覚障害だけを訴えている人達に血液検査を行うと、亜鉛不足が認められることがわかってきました。
この亜鉛不足の原因として、日本人の食事における亜鉛摂取量が多くはないのに加え、食品加工時に亜鉛を取り除いてしまう食品添加物が繁用されていることが推定されています。このような患者さんや薬剤・放射線による味覚障害患者に亜鉛の投与は有効です。亜鉛は蛋白質に多いので、食生活への配慮も必要でしょう。
味覚障害も、発症後早期に治療すれば治療の効果が上がります。文字通り、「味気ない人生」にならないよう、味覚の異常に気がついたらすぐご相談ください。