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神尾記念病院(東京都千代田区神田)は、耳鼻咽喉科疾患に対する高度医療を提供する専門病院です。



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声がれ

放置できない長期に渡る嗄声

嗄声(させい)とは聞きなれない言葉ですが、簡単に言うと「声がかれている」状態をいいます。
スポーツ観戦の応援、強いお酒を飲みながらのカラオケなど、のどの使いすぎで一時的に嗄声が生じる場合は心配はないのですが、嗄声が何ヵ月も続いたり、徐々に進行する場合および反復して起こる場合は、放置するわけにはいきません。原因を確かめるため、耳鼻咽喉科専門医に診てもらう必要があります。

嗄声の検査

声は喉頭にある声帯が振動してつくられます(図1)。
この声帯を喉頭鏡もしくはファイバースコープを用いて明視下に観察することが、嗄声の検査で最も重要です。いずれも外来で簡便に実施可能で、ファイバースコープといってもたいへん細いもので患者さんの苦痛はほとんどありません。
一口に声がれといっても、がらがら声、息もれのする声、力のない声など、病気により声の性質が異なります。発声機能検査では、この声の性質や声がれの程度を調べます。

レントゲン検査・CT検査は、声帯周囲を広く観察でき、特に腫瘍では重要です。  ガンか否か診断が困難な場合は、ラリンゴマイクロサージャリー(喉頭顕微鏡下手術)で、一部病変を取って病理検査を行います。

図1

図2

嗄声をきたす病気

急性喉頭炎
のどを使い過ぎたり、風邪をひいたりして起きる一過性の声帯の炎症です。

声帯ポリープ・声帯ポリープ様変性・声帯結節
慢性炎症が続いたりすると、声帯にポリープや結節が生じます(図2)。
歌手など音声を過度に使用する人に生じやすいことより、謡人結節とも呼ばれています。また、幼児から学童にかけてみられる声かれは、学童嗄声と言われ、声帯結節や声帯炎が認められます。

喉頭ガン
嗄声が治らない場合、最も注意しなければならないのは、喉頭のガンです。
喉頭ガンは、全身の悪性腫瘍の中で2%と頻度が高く、男女比は10:1で男性に多く認められます。また、声の酷使や、喫煙の習慣と関係が深く、喉頭ガン患者の90%以上は喫煙者という報告もあります。したがって、嗄声が長く続き、声をよく使う職業で、ヘビースモーカーの人は、まずこの疾患を念頭におく必要があります。
声門のガンの場合、ごく微細な変化でも声帯の振動に乱れを生じ、嗄声が引き起こされます。また、喉頭は他の臓器と異なり、間接喉頭鏡・喉頭ファイバーなどを使って明視下に外来で観察できるため、ガンの早期発見が比較的容易となりました。

反回神経麻痺
声帯を動かす反回神経の障害で、声帯が動かなくなり、声がれを生じます。甲状腺ガン、食道ガンなどがこの神経に浸潤して、麻痺が生ずることがありますので、精査が必要です。
以上の他に、外傷、ヒステリーなどの精神異常、異物など種々の疾患により嗄声が起こります。

嗄声の治療

声の出しすぎ、風邪などによる急性炎症は、発生を控え、内服薬・薬液の吸入でほとんどが治癒します。
一旦、ポリープや結節ができてしまうとラリンゴマイクロサージャリーにて切除しないと治りません。声帯の微妙な振動がその人特有な声を作っているので、顕微鏡下の丁寧な手術操作が必要になってくるのです。

喉頭ガンの治療法は病変の広がりにより異なります。声帯に限局している段階で早期発見できれば、放射線療法のみでほぼ完治します。しかし、ガンが声帯を越えて進行した場合は、喉頭摘出手術が行われ、声を失います。この場合でも、訓練により再び声が出せるようになりますが、元の自然な音声には及びません。

嗄声の長引く場合、特に声を酷使する人とか、喫煙習慣のある人は、自分の本来の音声をなくさないためにも、できるだけ早く専門医の診察を受けるべきと思われます。

一側反回神経麻痺の手術(甲状軟骨内方移動術)

声帯ポリープや謡人結節などの原因以外に嗄声(声がれ)が出現する病態に、反回神経麻痺があります。これは声帯を動かす神経である反回神経が何らかの原因で麻痺して、片方の声帯が動かなくなり発声時に声帯の間に隙間ができることによって起こります。
麻痺の原因は、肺がん、食道がんや甲状腺がんなどの悪性腫瘍やリンパ節への転移が神経に浸潤(癌細胞が神経をダメにすること)したり大動脈瘤の圧迫などがありますが、最も頻度の高いのは風邪をひいた後にウイルスが反回神経を障害して起る突発性(ある日突然声が嗄れる)です。

突発性の麻痺は数カ月で回復することもありますが、悪性腫瘍が原因で起る麻痺は、がんが治ったとしても回復することはありません。何れにせよ麻痺発生後6カ月経っても声の改善がなければ、それ以上の経過をみても声の回復は見込めません。この時、甲状軟骨内方移動術の適応が出てきます。

手術の原理は簡単で、前にも述べましたように嗄声(声がれ)の原因は発声時の声帯間の隙間の発声なので、それを無くす手術です。甲状軟骨(のどぼとけの軟骨)に小さな窓を開け(図1)、その窓にシリコン板などの人工物を挿入するとシリコン板の厚みだけ声帯が正中に移動して、声帯間の隙間が無くなり正常時の発声に近くなります(図2)。
ただ全ての反回神経麻痺の患者さんがこの手術で声の改善が得られるわけではありません。麻痺の程度の強い状態(声帯間の隙間が広い、左右の隙間でなく上下の隙間など)では、この方法では声の改善は難しく、他の方法(披裂軟骨内転術など)を選択しなくてはなりません。

手術は患者さんに声を出してもらいながら行うため局所麻酔で行い、手術時間は約1時間30分、3泊4日程度の入院が必要です。

図1.甲状軟骨の窓状切開

図2.甲状軟骨内方移動術の原理の模式図