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Kamio Memorial Hospital Foundation
耳鼻咽喉科の病気・検査および治療
602 めまいの検査

  身体の平衡は、主に三つの器官からの感覚の情報を集めて維持されています。一つは眼からの情報、一つは内耳(三半規管と耳石器)からの情報、一つは手や足の筋肉からの情報です。これらの情報は、脳の中の脳幹や小脳で受け取られ、この場所から身体の各場所に命令が伝えられて平衡が保たれています。(図1)

図1

 したがって、これらの3つの情報源と、情報を集めるセンター、それらを結ぶ道に何らかの異常が起こると、身体平衡の乱れが生じます。身体平衡の乱れをめまいとして感じることになります。
 めまいにはいろいろな種類があります。「自分がぐるぐるまわる」、「周囲がまわる」、「目の前が暗くなる」など、あげればきりがないほどです。  また、めまいの種類がたくさんあるのと同じように、めまいを起こす原因も、数え切れないほど多くあります。このことは、先に述べた、平衡を維持するためのしくみをみると容易に想像できると思います。
 例えば、内耳の病気、頚部の障害、脳腫瘍や脳出血などの頭の中の病気、血液の病気、血圧の病気などです。ですから、あなたのめまいがどこのどんな病気のために起こっているのかを診断するには、多くの検査が必要になってきます。そこで、めまいの検査にはどのようなものがあるのか、また、その検査の必要性について、以下に紹介します。

●血液および血圧の検査

 血液の病気、例えば強い貧血、白血病、糖尿病、梅毒などのとき、症状のひとつとしてめまいがよく起こります。また、高血圧や低血圧でもめまいが起こります。そのため、血液の検査と血圧の検査が必要となります。

●レントゲン検査

 めまいは、耳の病気や首の骨や筋肉の病気でもしばしば起こります。そのため、耳と首の骨のレントゲン撮影が必要となることがあります。脳血管に異常があることが疑われる場合には、血管撮影が行われ、頭の中に腫瘍などのあることが疑われる場合には、コンピューター断層撮影(C.T)が行われることがあります。

●自律神経機能検査

 内耳と自律神経とは密接なつながりがあります。内耳の障害によりはき気、嘔吐、動悸、ひや汗などの自律神経症状が起こりますので、自律神経機能検査を行うことにより、内耳障害の程度を知ることができます。

●きこえの検査

 めまいの原因のうち、かなりの多くのものが耳(内耳)の病気です。内耳には、からだの平衡を保つために必要な耳石と三半規管と、きこえに必要な蝸牛という器官が近接していて、一つの管でつながっています。そのため、内耳の病気でめまいが起こっている場合、しばしばきこえにも変化が現れます。そこで、きこえの検査も必ず行われます。

●からだの平衡の検査

 自分でめまいがしているときには、他の人がみても、ふらふらしていたり、歩くと一方向へ傾いていることがわかります。そこで、このバランスの乱れを正確に判断する検査が必要になります。
 目を開けて立っていられるか、目を閉じたらどうなるか、片足でも立てるか、目を閉じて足踏みするとどうなるかなど検査し、からだの平衡の乱れの程度を調べます(重心動揺検査)。

●眼振(がんしん)の検査

 めまいがあるときに、からだの平衡に乱れが生ずるのと同じように、眼にも乱れた動きが現れます。眼が振り子のように動くので、これを眼振といいます。眼振は、一般に何かを見つめているときより、眼を遮ったときによく現れます。そこで、暗い部屋で、特殊な眼鏡(フレンツェル眼鏡)をかけて検査します。

図2

 この眼鏡をかけると、目の前がよく見えませんが、検査をしている人からはよく目の動きが観察できます。眼鏡をかけて、首をいろいろな位置に動かして検査します。目の動きの乱れは、からだの平衡が乱れるほどひどくないときでもからだの平衡の乱れを反映するので、眼振の検査をすることによって異常を詳しく分析することができます。

●温度刺激検査

 耳の中に冷たい水(ときには、冷たい空気や、温かい水の場合があります)を入れて検査します。内耳が健康な場合には、かるいめまいがします。このめまいは、約2分で完全にとまります。しかし、内耳に病気があるときは、めまいがしないか、健康な側と比べてめまいを弱く感じます。この検査で、めまいを感じているときは、フレンツェル眼鏡をかけて、外側から眼の動きを見ていると、眼振が観察できます。この検査も、めまいの診断に欠くことのできないものです。

●電気眼振図検査

 眼振の検査は、めまいのうちでも最も重要なもののひとつです。フレンツェル眼鏡をかけて検査する場合は、眼を閉じてしまえば検査できませんし、多くの人の目で確かめることも、記録に残して検討することもできません。そこで、眼振を電気的にとらえて記録するのが電気眼振図検査です。左右の眼の外側と、一方の眼の上下と額に電極をはりつけるだけで、眼の左右、上下への動きが記録できます。

図3

こうして、左右、上下を見た時、眼をおおったとき、眼を閉じたときの状態での眼振の有無を記録します。  つぎに、眼がスムーズに動くかとか、眼の運動が十分早くできるかなどを検査しながら記録します。眼のスムーズな動きの検査は、眼の前にある黒い点が左右にゆっくり動くのを眼で追うことで検査します(視標追跡検査)。正常ですと眼はスムーズに黒い点を追うことができますが、頭の中の血管の病気とか、腫瘍などのときは、これがギクシャクした動きになります。

図4

眼が十分早く動くかどうかの検査では、黒い縦線がひいてある大きな筒の中にすわって検査します(視運動性眼振検査)。筒は、はじめゆっくり、だんだん早く、そしてまたゆっくりとなり、停止します。黒い線が筒と一緒に回りので、この1本1本の黒い線を目でとらえるように努力します。正常ですと、かなり早い速度まで黒い線を見ることができますが、頭の中の病気ではこれが十分に見られず、しばしば、ゆっくりしたスピードでも動く黒い線をまったく見ることができなくなります。この異常の程度を、眼振図により適確に診断します。
●重心動揺検査

 重心動揺検査は、めまい、平衡障害の診断を目的とした検査のひとつで、開眼時、閉眼時における直立姿勢に現れる重心の動揺を記録、分析して身体の平衡の維持に働く機能を検査するものです。この身体の平衡の維持には、視覚、内耳(前庭・半規管)、脊髄固有反射およびこれらを制御する中枢神経が関わっています。
検査は簡単で、被験者は身体に装置をつけることなく検出台に直立し、重心の動揺を記録、自動分析します。被験者が検出台にのって測定する時間は原則として1分間ですが、最低30秒立っていられる人であれば検査が行えます。これをまず開眼で行い、次に閉眼で行います。
この検査で、平衡障害の客観的把握、および障害の程度の把握ができます。また、平衡障害の原因が内耳にあるのか(耳からくるめまい)、中枢にあるのか(脳からくるめまい)の鑑別がグラフにより一目で分かるようになっていますので、病気の経過の観察、治療効果の判定ができます。


メニエール病寛解期例

●動揺パターン

  重心動揺のX−Y記録図より、動揺の拡がり方向を動揺型パターンとして認識します。


●その他の検査

 めまいの検査には、今まで述べてきたもの以外にも、いくつかの検査があります。はじめに述べましたように、めまいはいろいろな原因で起こるためです。そのうちの一つに、頸の筋肉や骨の異常で起こるめまいがあります。そこで、頸に振動(電気あんまのようなもの)を与えて、からだの平衡の乱れや、眼振を見る検査を行います(頚部振動刺激検査)。頸にめまいの原因あるいは何らかの関係がある場合には、振動を与えることによって、強い身体の揺れや眼振が起こります。
 めまいの原因をつきとめるためには、このようにたくさんの検査が必要です。しかも、どれ一つも無駄な検査はなく、例外なく、これらの検査はすべてのめまいの患者さんに行われます。
 これだけの検査を受けるには時間的にも長くかかり、1日だけでは終了しない場合が多いのですが、必要な検査であることを理解してください。

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