|
704 耳鼻咽喉科手術と全身麻酔
耳鼻咽喉科では古くから多くの手術が局所麻酔で行われてきました。しかし、最近ではほとんどの手術が全身麻酔で行われます。全身麻酔は大変恐ろしいと思われている方が多いのですが、実際は局所麻酔より安全性が高いのです。
●全身麻酔の安全性
最近の医学の発達はめざましいものがあり、麻酔科の分野でも優れた麻酔薬や全身状態を把握するためのモニター類が開発され、安全性は極めて高くなりました。
とはいっても、意識が無くなってしまう全身麻酔となると、時折、新聞等で麻酔事故が報道されたりすることもあり、どうしても一抹の不安を伴うのは無理もありません。ただ、そういった事故のほとんどは、麻酔科研修中の医師によって引き起こされています。
麻酔の先進国である欧米に比べ、我が国の麻酔科の歴史は浅く、まだまだ専門の麻酔科医も不足しており、専門の麻酔科医は、全医師の1%にも達していません。
この麻酔科の専門医(指導医)は、5年以上の臨床経験と実技試験を含む厳格な審査をパスした医師に与えられる資格ですが、大学病院をはじめ大病院でなければ常勤しておらず、また常勤していても、指導医の名が示すごとく、麻酔科研修医の指導に追われ、実際に自ら麻酔をかけることはそう多くはありません。すなわち、手術を受ける時に麻酔専門医に麻酔をかけてもらうことは、かなり幸運なことと思ってよいでしょう。
当院の手術の麻酔は、すべて経験豊富な麻酔専門医によって行われていますので、安心して手術をお受けください。
次に耳・鼻・のどの手術を全身麻酔で行う理由について述べます。
●全身麻酔の意味
【耳の手術】
慢性中耳炎に対する鼓室形成術は、顕微鏡を使用する繊細な手術ですので、わずかに身体が動いても手術操作に影響を与えますが、全身麻酔ならば十分な安静が保てます。
また、小児に多い滲出性中耳炎は、治療として鼓室内チューブ留置法が必要となる場合があります。小児が恐怖心とか痛みなどでちょっとでも動くと、手術操作は不可能になるか、あるいは重大な副損傷を与える危険性もあるので、全身麻酔下で行います。
【鼻の手術】
手術部位は敏感な場所なので局部麻酔では手術操作によりかなりの肉体的、精神的苦痛を伴います。しかし、全身麻酔ですと手術中はまったく痛みを感じませんので、苦痛から開放されます。
【アデノイドおよび扁桃摘出術】
口の中の手術ですので、出血や分泌物がのどを刺激し、咳がでたり、場合によっては誤嚥したりすることがありますが、全身麻酔ならば気道が確保してありますので、そのような心配はありません。また、小児に多い手術ですが、小児は恐怖心が強く、手術に対する恐怖観念が大人になってからも精神障害として残る場合がありますので、精神障害を回避する上でも全身麻酔が不可欠です。全身麻酔ならば、いつのまにか寝てしまい、眠っている間に手術は終わってしまいます。
【声帯の手術】
声帯ポリープの手術も顕微鏡下に行われます。局所麻酔では患者さんに苦痛を強いることになるとともに、十分な術野が確保できませんので、全身麻酔が不可欠です。
【その他、合併症のある方】
現代は高齢社会、ストレス社会であり、高血圧、心臓病、呼吸器疾患、糖尿病などの持病がある患者さんが手術を受ける機会が多くなりました。その場合でも専門の麻酔医が手術の間はもちろんのこと、術前、術後を通して全身管理を行いますので、安心して手術が受けられます。
●全身麻酔の実際
【手術前夜】
緊張する方がいらっしゃるので、睡眠導入剤を処方しています。十分睡眠をとり、緊張せずに手術室に入室してください。
【全身麻酔】
手術室にはいり、手術台に横になります。手に血圧計を巻き、胸には心電図モニターのシールを貼ります。同時に点滴をとりますが、痛み止めシールの効果で、少しチクリとしまずが、それほど痛いものではありません。
顔にマスクをあてると、いよいよ麻酔の開始です。点滴から眠くなる薬が入り、スーと眠くなってきます。現在使用している麻酔剤は極めて副作用の少ないものです。
【手 術】
麻酔が安定したら手術開始です。手術終了後、血圧・呼吸が安定したら回復室へ移ります。麻酔からしっかりさめるのは、手術が終了して病室に帰ってからになります。目がさめても痛み止めを十分使用しているので、痛みを感じることはほとんどありませんが、痛みには個人差があるので、痛くなったら早目にお知らせください。すぐに対処いたします。
|